top of page

不眠夜話 飼い猫ムギと読みたいおやすみ前の30分読書【7月】


不眠夜話 飼い猫ムギと読みたいおやすみ前の30分読書 7月

 

この記事の目次


 


人間が入眠するまでの時間は、個人差があれど一般的には15分〜30分程度かかると言われています。

オオムギは医療機関で診断された『不眠症』ですが、寝る前に読書をすると心地よく眠れるようになるとのアドバイスがあり毎日実践している最中です。(※オオムギの事例となります。個別の診断や治療については専門医に相談しましょう)

 

梅雨も開け本格的な夏がやってきました。夏になると暑くて寝苦しい日々が続きます。そのため睡眠の質はどうしても低下しがちに。以下のことに気をつけると蒸し暑い夏でも快適な睡眠を得られるそうです。


  1. エアコンは朝までつけっぱなし: 室温を27℃前後に設定し、エアコンを就寝中もつけっぱなしにすると、快適な目覚めが得られます。

  2. 湿度と室温に注意: 湿度が60%くらい、室温は26~28℃前後が理想的です。湿度が80%を超えると、室温が26℃でも寝苦しく感じることがあります。

  3. 寝具と寝巻きの選択: 薄手の長袖と長ズボンを着用し、通気性のある麻や綿素材を選びましょう。足先をカットした靴下を履くと冷え予防にもなります。

  4. 風をあてない工夫: エアコンの風に直接体があたらないように気をつけましょう。サーキュレーターや扇風機を使う場合も同様です。

  5. 夏でも湯船に浸かる: 夏はシャワーだけで済ませる人も多いようですが、快適な入眠のためには、湯船に浸かることが大切です。というのも、快適な入眠には、「深部体温」のリズムを整えることも重要だからです。


エビデンス:快眠コンソーシアム



お腹を出して床に寝そべる愛猫ムギ
ムギもお腹を出してしまう暑さ

比較的暑さに強い生き物とはいえ、ムギも湿度の高い夏は苦手のようです。夜は特に水分補給・室温に気を配り、人も猫も快適な睡眠を得られるように注意しましょう。


眠る準備が整ったところで、不眠症のオオムギが快眠を目指して毎日読書をした中からおすすめの本を紹介していきます。今月は夏にむけて、いろいろな意味で「涼しくなれそうな本」を選んでみました。




火のないところに煙は

火のないところに煙は

新潮社文庫刊/著者:芹沢 央

ジャンル:小説


2019年に本屋大賞にノミネートされた作品。夏なので怖い本を読みたい、でも怖すぎるのは眠れなくなるので、ホラーが苦手な人や初めてホラーを読む人にも楽しめる程度の怖さ、まさにゾクッとするけれども夜眠れなくなるほどではない絶妙なバランスを持つ物語が理想だと思い、探しに探して最終的に行き着いたのがこちらの作品でした。


各短編が一見独立しているようでありながら、読んでいくうちに少しずつ明らかになる共通のテーマや伏線が、最後には一つの大きな恐怖として収束していく構成です。読み進めていくと、謎解き要素と恐怖が交互に現れ、次に何が起こるかわからないドキドキ感が続きます。決して荒唐無稽な怖さではなく、虚構と真実が微妙に混じり合った不思議な物語で、メンタルをじわじわ削られるような現実感のある怖さを体験できました。


最後までこの物語はフィクションなのか?現実なのか?と考えてしまい、そんな気持ちの揺れがさらなる怖さにつながっていたと思います。また、読み終わったあとに裏表紙に気づくとゾッとします。そのような仕掛けを含めて夏におすすめの一冊です。




ルピナスさん−小さなおばあさんのお話−

ルピナスさん

株式会社ほるぷ出版/作:バーバラ・クーニー 訳:掛川恭子

ジャンル:海外絵本


内容もさることながら、挿絵の繊細なタッチと色彩のバランスが見事で、まるで絵から物語の世界が広がっているかのような美しさがありました。手元に置いておきたいなと考え、迷わず購入した作品です。


タイトルの「ルピナスさん」は、幼いときにおじいさんと3つの約束をします。彼女はおじいさんとの約束を胸にやがて歳を重ね、3つ目の約束「世の中をもっと美しくする」、を果たすときがやってきます。絵本の中での色彩が移ろいゆくように、少女だった女性が晩年を迎えるまでの人生を丁寧に描いていて、静かな中にも彼女の力強い信念を感じます。読み進めるとともに、人生の意味をもう一度考えさせられるような絵本でした。


ルピナスの花言葉は「いつも幸せ、多くの仲間、母性愛」だそうで、花自体が次の年にも再び咲く特徴を持っていることから、生命や希望、慈愛を次の世代に受け継いでいくことの大切さを感じます。この絵本の最後の文章を通じて、その素晴らしさに改めて思いを馳せることができました。




雨夜の星をさがして 美しい日本の四季とことばの辞典

雨夜の星をさがして

玄光社/著者:古性 のち

ジャンル:辞典・エッセイ


著者の古性さんは写真家、コラムニストであり、Instagramで美しい写真に日本のことばを添えて発信されている方で、書籍が発売されると発表があった際にはすぐに購入しました。


知っているようで知らなかった日本の四季の言葉の意味や成り立ち。日本語の色の表現の豊かさ。独特の柔らかい「大和言葉」。私たちの生まれ育った国は、こんなにも素敵な言葉で溢れていたのかと感動を覚えました。


私は記事を書く作業のときになんとなくパラパラと開いていますが、物語や短歌、俳句を創作する際に手元にあると世界が広がりそうだと感じます。また写真も素晴らしく、緑豊かな風景や花、空のコントラストを見ていると、インスピレーションが湧いてくるようで読むたびに新しい発見があります。それぞれのページに言葉と調和した清らかで柔らかな世界観が感じられ、デザインする際の配色の参考にもなりそうです。


目次の春夏秋冬それぞれに添えられている言葉が大変美しく、眺めているだけで世界って綺麗だなと思えてくるような、透明感あふれる一冊です。




NHKラジオ深夜便 絶望名言

絶望名言


飛鳥新社/著者:頭木弘樹・NHK(ラジオ深夜便)制作班・根田知世己・川野一宇

ジャンル:人文


世界に名だたる文豪も挫折はするし絶望の淵に立たされることもあるのだ、としみじみ考えさせられた一冊でした。NHKラジオ番組収録の書籍化だそうで、残念ながら私はラジオ版を聞いたことはありません。ですが番組を忠実に書籍化した内容のようで、タイトルや表紙のイメージに反して温かい語り口ですので、安心して読み進めることが出来ます。


社会の風潮やメディアの影響もあって、私たちは『常にポジティブでいるべきだ』と思いがちですが、この本はそれとは反対の視点を提供してくれます。ページをめくるうちに、倒れたままで生きていていいんだ、別に夜は明けなくてもいいんだ、ただそのままでいていいんだ、と抱えている絶望をまるごと肯定されるような安心感を感じました。長い間難病に苦しんだ経験がある著者だからこそ、希望ではなく絶望の言葉を拾い上げ、同じように悩んでいる人たちに寄り添うことが出来るのではないでしょうか。


私が最も共感した言葉は、カフカの「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかってつまずくこと、これはできます。いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。」


もちろんポジティブな言葉が有効な時もありますが、一歩も動けないほどの絶望にいるときには、無理に立ち上がろうとするよりも、まず現状の自分を認めてくれる言葉が必要です。意外なことに、心情に寄り添ってくれる絶望名言の方が、励まされたり、心癒されたり、勇気づけられたりするのだ…と新しい知見が得られた一冊でした。




世界奇想美術館 異端・怪作・贋作でめぐる裏の美術史

世界奇想美術館 異端・怪作・贋作でめぐる裏の美術史

日経ナショナル ジオグラフィック/著者:エドワード・ブルック=ヒッチング 監修:田中久美子 翻訳:藤井留美

ジャンル:美術書


日経ナショナルジオグラフィック社から発刊されている「愛書狂の本棚」「地獄遊覧」に続く本作。非常に視覚を刺激する、奇妙で不可思議な作品たち。有名な作品もいくつか紹介されていますが、その異端性や怪作に偏った内容から、あまり目にする機会のない珍しいものが多い、というのが特徴です。解説も大変興味深いものばかり。

 

数ページめくるだけで、圧倒的なビジュアルと内容の奇妙さにゾッとする感覚が味わえます。タイトルに偽りなしの奇想天外さ。本書の終盤では、現代の生成AIが生み出す不思議なアート作品との比較が行われ、昔の画家たちの斬新な発想にも光が当てられています。改めて最後まで読んで、AIに負けず劣らず摩訶不思議な発想をしていた画家がいたのね、と目からウロコでした。なんといってもその「摩訶不思議」が時代背景や画家の人生に裏打ちされているものなので、解説を読んだあとに再度作品を眺めると、それまでとはまた別の感慨が生まれます。(ただしその視覚的なインパクトと不気味さゆえ、特に繊細な方は眠る前に読むと夢に出てくるかもしれません。)内容的にも紀元前から近代まで日本を含めた古今東西の作品が網羅してあり、とにかく読み応えがあります。


個人的には「1361年のイネス・デ・カストロの戴冠」が最も印象に残っています。妻の戴冠式で隣に佇むポルトガル国王のペドロ。だがその妻は実は…。不可思議な美術史に興味のある方はぜひ手に取っていただきたい一冊です。






飼い猫ムギがベッドの上で眠っている

ムギはいつの間にかそばに来て眠っていました。深夜にどんな衝撃的な本を読んだとしても、猫をなでなですると心が落ち着きます。私の読書には欠かせない存在です。


おやすみなさい。





Comments


Commenting has been turned off.

Member

 TAP99スタッフ
社内ライター
最強プロライター

Member

bottom of page