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図書館には公式キャラクターがいる


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ご存じだろうか。佐世保市立図書館には“公式キャラクター”がいるということを。セーラー服を着たカモメの「SABON(さぼん)」だ。SABONが誕生した2019年、私は、全国各地の図書館それぞれに公式キャラクターがいて、色んな取り組みやイベントなどをPRしているということを知ったのだ。


エンタメとは無縁(とも言えなくなってきた昨今だけど)だと思っていた図書館のイメージを覆す、個性豊かな彼らの世界をちょっとだけ覗いてみませんか。


誕生5周年を迎えたSABON


SABON
図書館総合展ウェブサイトより引用

まずは、我らが佐世保市立図書館の公式キャラクター・SABONについて改めて紹介しよう。


SASEBO(させぼ)のSAと図書(ほん)のBONでその名が付けられたSABONは、港町佐世保らしいカモメのキャラ。着ているセーラー服の襟は本の形をしており、その胸元には佐世保市章のワンポイントが。ピンクのほっぺが愛らしいぞ~!


本の妖精なので「性別は謎」らしい。後ろを向けば、これまた愛らしいナップサックを背負っているのが分かる。


SABON
図書館総合展ウェブサイトより引用

佐世保市立図書館のロゴ(SABONのデザインの基盤かも!)が入っているところにもこだわりを感じてニンマリ微笑んでいたら、佐世保市立図書館の司書さんが、SABONデザインの並々ならぬこだわりを教えてくれた。


・背中のバッグは絶対持たせたかったのでデザイン画に追加してもらった。体型的な制約があるので、リュックではなくナップサックを持たせた。ロゴだけでなく色にも佐世保のイメージを込めた。


・本を守るためにも、図書館としてはマイバッグを推奨したい。特に雨の日の弁償本問題の多さには全国の図書館職員さんが胸を痛めている。ゆえにSABONのナップサックには多くのリスペクトと共感を集め、のちに他の自治体でもリュックを持たせたキャラクターが登場したほど。「SABONは背中でも語るんです(笑)」とのことで、その気迫に震える。


デザインの細かさに、ゆくゆくは3D化(着ぐるみ化)も実現可能だなと感心していたら、図書館のイベントでペーパークラフトが配布されていた。ゆくゆくが、もの凄い速度で迫ってきたぞ。


何か新しい動きがあるとすぐ「業者が入った?」とソワソワする私だが、聞くと、職人気質な図書館スタッフさんが独自に設計して作成したものだという。閑静な図書館の水面下で、アットホームな熱のこもった作業が。職人技とSABONへの愛情が結びついた集大成かもしれない。


SABONのペーパークラフト
SABONのペーパークラフト。完成度が高すぎておののいた。

読書と自学だけを行う場所だと思っていた図書館で、こんなに可愛い公式キャラクターが誕生するなんて夢にも思わなかった。5周年おめでとう、SABON!



八百万の神々のごとく君臨する図書館キャラクター

さてここからは、全国の図書館にいる公式キャラクターのほんの一部を、勝手に付けたカテゴリー別に紹介していこうと思う。


なお、私がその事実を知ったきっかけは、日頃からお世話になっているベテラン司書(とても見目麗しいので、以下GL:グッドルッキングさんとする)さんの一言だった。

 

GLさん「実は全国の図書館に、チラホラいるんですよ…公式キャラクター。」

 

なんだと、それはこの目で確かめてみなくてはなるまいてと調べていくうち、これまで抱いていた図書館のイメージを覆すかもしれないキャラクターの数々と出会うことができたのだった。


また、その過程で図書館が新しいステージに進んでいることも知ったのである。



図書館といえば本!王道愛されパターン

【ぶくまる/神奈川県平塚市中央図書館】

ぷくまる
図書館総合展ウェブサイトより引用

ふくろうの男の子で、頭の上にあるのは本の形をした帽子。理系男子のメガネと同じくらい安心感がある。


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【らぶちゃん/島根県立大学・島根県立大学短期大学部松江キャンパス図書館】

らぶちゃん
図書館総合展ウェブサイトより引用

学生さん考案のキャラ。広辞苑を3冊乗せられる(10kg近く)強靭な耳がチャームポイント。「~に」「~だに」などの出雲弁を喋る。


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【図書五郎/慶応義塾女子高等学校】

図書五郎
図書館総合展ウェブサイトより引用

本の妖精で、5人兄弟の末っ子。素直になれない性格のため口がへの字になっている。


寿司好きなため、自身はシャリで、本がネタのようなビジュアルになったのだそう。本もお寿司も、ジャンルや店によって美味しさも鮮度も違うもんね!深いぜ!


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【としょくん/常磐大学情報メディアセンター】

としょくん
図書館総合展ウェブサイトより引用

百科事典に乗り移ったつくも神。職員さんがメモ紙に10分で描き上げた力作だそうです。


“気の遠くなるような長い時間を本棚で過ごしてパワーを貯めた「としょくん」は、近くに居た職員さんに囁きました。〈オイラを…描いておくれよ、そこの…メモ紙にさ…時間が無いんだ、さぁ早く…。〉”


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【本挟しお太朗/愛知淑徳中学校・高等学校】

本挟しお太朗
図書館総合展ウェブサイトより引用

伸縮自在のスラッとした細長い脚が魅力なので、美脚の人と栞型の衣装があれば3D化も夢じゃない。


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本どころではない、インパクト大な特殊形態

図書館のイメージの枠を越えた、強烈な印象を残すキャラを挙げてみた。

【語朗(かたろう)/大東市立中央図書館】

語朗(かたろう)
図書館総合展ウェブサイトより引用

山で友達と相撲三昧の生活だったが、自動車図書館で図書館まで遊びに来て居つく。独特なヘアスタイルは、市花の菊。「おにぎり、大好きなんだな」というセリフが聞こえてきそう。菊の花にお水をあげるのを忘れないようにしなきゃ。


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【ランガナたん☆/田原市図書館】

ランガナたん☆
図書館総合展ウェブサイトより引用

“1892年8月9日、インドに生まれる。くしゃみをするとおっさんになり、あくびをすると女の子になる。”


なんて、どんな経緯でこのプロフィールが生まれたのだろうか。


「わからん、なんとか解脱して楽になりたい…はっ、これがもしやインド哲学!?」などと身体をぐねぐねさせていると、GL司書さんから「ランガナタンはインドの図書館学の父ですよ」とのご指摘をいただいた。


ランガナータン(或いはランガナタン, Shiyali Ramamrita Ranganathan, சியலி ராமாமிருத ரங்கநாதன்、1892年8月9日 - 1972年9月27日)は、インドの数学者・図書館学者でタミル人。図書館学五原則とコロン分類法を制定した事で知られ、インド図書館学の父と呼ばれる。(Wikipediaより引用)


なるほど、かなりちゃんとした設定を持ったキャラクターなのだった。


「図書館学の五原則は、学生の時に呪文のように唱えてました…」とGLさんがぽつり。すごいぞ。一体なんなんだ。図書館学の五原則。


気になる方はぜひ調べてみてほしい。わたしもちゃんと勉強して、おのれの根性のなさと無知に打ち震えながら、口がカラカラになるまでわたしも唱えたい。


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【落花生/岡崎市立中央図書館】

落花生
図書館総合展ウェブサイトより引用

公式のPR文には“魅惑のくびれを持つ落花生。”とだけ書かれており、とてもクールで潔い。洗練された落花生デザインだ。それ以外の情報は必要ないのだ。


名前の読みが「おちはないく」ということ以外には。


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【本のヒーロー ダクシオン/HEROES' LABO・シン】

ダクシオン
図書館総合展ウェブサイトより引用

“古来より受け継がれし「閃詩の書」を用いて、本好きの青年エイチマモルが本開(変身)した姿。人類を無知・無関心にしようとする悪の組織「インディグノ帝国」から人々を守るため、日夜戦っている。父親から鎧を受け継いだ時から失われている「左胸の1冊」を探すため、全国の図書館・書店などを巡っている。その1冊が見つかれば、真の力が発動されるらしい…。 ”


あまりに素晴らしかったので、公式PR文をそのまま引用してしまった。ちなみに武装は図書剣(図書券がデザインされている)と図書ガード(盾)、奥義は読み切りらしい。


受けてみたいぞその技。「続きが気になる!続きを聴かせてェェーーッ!」と悶絶しながら岩場で爆発したい。ちなみにGLさん曰く、とても良い声をしているらしい。


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【蛾のおっさん/るみづほ妄想図書館】

蛾のおっさん
図書館総合展ウェブサイトより引用

学校図書館の教育格差をよくするべく「蛾(が)んばって」いる蛾のおっさんだ。蝶ではなくあえて蛾であるところにポリシーを感じるし、それゆえの哀愁もある。


自治体によって起こっている学校図書館の教育格差に一石を投じる、至って真剣なキャラクターである。筆者の地元・佐世保にゆかりのある方が生みの親らしく、ぜひプッシュしたいキャラクターだ。


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猫はやはり人気モチーフ

一見、紙と相性が最悪のように見える猫。しかし図書館界においても人気のモチーフとなっており、猫好きの多さがうかがえる。描きやすさに加えて賢そうでなんだか縁起の良いイメージも採用される理由のひとつだろう(すみません猫好きなので早口になりました)。


【にゃよい/足立区立やよい図書館】

にゃよい
図書館総合展ウェブサイトより引用

やよい図書館に住み着いているノラネコ。本が大好きで、頭にかぶった帽子がトレードマーク。やーん、もう、ひたすらかわいい。なまえも素敵だなあ。


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【きやにゃ、もりし/笠岡市立図書館】

きやにゃ、もりし
図書館総合展ウェブサイトより引用

同市出身の若手漫画家・青戸成さん(『暗殺教室』(松井優征)の公式スピンオフ作品『殺せんせーQ!』の作画担当)によるデザイン。ネーミングは、同市出身の翻訳家・森田思軒(もりた・しけん)さんと小説家・木山捷平(きやましょうへい)さんから。故郷への愛を感じます。2匹一緒に抱きしめたいなあ。


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【ねこ館長/江戸川大学総合情報図書館】

ねこ館長
図書館総合展ウェブサイトより引用

はたきを片手にお掃除や書架の間のゴミ拾い、重い本を抱えての配架など、猫にしては働き者。毎月シーズンにあわせたコスプレで図書館ウェブページのトップを飾っている。


「署長」や「駅長」でもおなじみの猫が、館長としても大活躍。ファッションリーダーとして、いつも同じ衣装に甘んじることのないストイックな一面も素敵だ。


いつもお疲れさま、って、首のまわりをモフモフ撫でてあげたいなあ。


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これまでざっと図書館の公式キャラクターをピックアップしてみたがいかがだろうか。ご紹介したのはほんの一部だが、彼らの多くは手書きのテクスチャーを色濃く残している。


その道のプロにデザインを依頼するのはごく稀で、たいていが館内外での公募(職員さんや一般市民の方の手書き)だ。予算をあまり割くことができないという事情がうかがえるが、そのおかげか、なんだか懐かしさすら内包した親しみが感じられてほっこりしてしまうのだ。



見た目はゆるいが、働き方はゆるくないぞ

しかし、図書館総合展のサイトを覗いてみると、「図書館キャラクターはゆるくないぞ! 館の広報に、利用者への案内にと大活躍だぞ」という。


私はつい、見た目のゆるさに(とても良い意味です)勘違いをしていたが、彼らの役割はあくまで「広報係」なのである。

そんな図書館が行なっている、意外とまだまだ知られていないサービスについても少しご紹介したい。


【レファレンス】

館内所蔵の資料を使って、資料や情報を探すお手伝いをするというものだ。


「紅茶について詳しく書かれている本が読みたい」はもちろん、「小さい頃、海軍の宿舎に住んでいたのだけど、その場所が知りたい」といった『探偵ナイトスクープ!』的なご依頼にまで対応してくれる。


事例詳細はこちら


特に古い情報となるとインターネットに載っていなかったりするため、利用する価値は大いにあるのだ。内容によって時間がかかることもあるが、知りたい情報に辿り着いた喜びは手探りでお宝を探し当てたかのごとく、である。

そんなわけで、これらのキャラクターたちは、そんなサービスや魅力、新着情報などについて、全力でPRを行う役割を担っているのだ。


「利用者の数が増えることも大切ですが、層の広がりも大切。伝えたい人たちに確実に情報を届けるには、守りや待ちではなく、攻めが必要なんです。そこに、みんなが注目してくれるような“相棒”がいてくれたらいいなと思って、キャラクターを作ることを提案しました」


公式キャラクター誕生は、時代を生き抜く1つの手段だ。


インターネットや生活習慣の変化により、情報の取得方法が大きく変わってきた昨今。


図書館や書店離れも囁かれるいま、従来のお話し会に加え、コンサートなどの公演やワークショップ、大型イベントの開催など、多くの人に足を運んで本や空間に慣れ親しんでもらうきっかけを作らなくてはならない。まさに攻めの時代に突入しているのだ。



「図書館キャラクターの環」

図書館総合展の様子
図書館総合展ウェブサイトより引用

ところで、この記事でたびたび登場している“図書館総合展”って何? と思っていらっしゃるかもしれない。


それは、年に一度、図書館関係者たちの海底火山のようなパッションがスパーキングする最大規模のトレードショーである。全国の図書館の普及や交流のため、都市計画や行政、教育、出版関係を巻き込んで行われるのが【図書館総合展】だ。


2024年で26回目を迎え、年度ごとにアーカイブが残されている。実にさまざまな取り組みや出展がなされているのでぜひご覧いただきたい。

その中の催しの1つに『図書館キャラクターの環』がある。※リンク先は2023年度のものです


“ゆるキャラだけじゃなく、図書館キャラだって頑張ってるんだぜ!”と、これらのキャラクターたちにフォーカスを当てたこの催しも今回で10回目を迎える。


エントリー制の投票イベントから一転、6回目からは「図書館職員さんたちの忙中のひとときの息抜きを楽しんでいただく」という主旨で種目を再構成して開催されている。全国の図書館キャラクターの頑張りを労うイベントとなったのだ。いつもお疲れ様です!

ちなみに、5回目となる『図書館キャラクターグランプリ2019』では、佐世保市立図書館のSABONが「審査委員会特別賞」を受賞したのだ。えっへん!



図書館総合展2024年の情報もぜひチェック!

これまでのイベント開催の様子
図書館総合展ウェブサイトより引用

そんな図書館総合展は6月29日(土)からオンラインでも開催される。少しでも興味のある方はぜひ参加してみてほしい。


今年はどんな図書館キャラクターに出会えるだろうか?とても楽しみである。読書だけにとどまらない、図書館のディープでアツい世界をぜひ覗いてみてね!


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イベント情報

【図書館総合展】


 

※記事の作成にご協力いただきました、図書館総合展事務局長さま、佐世保市立図書館の司書さん、誠に有難うございました!







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